坊っちゃん列車・千夜一夜小話の巻

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第5話 道後温泉駅での坊っちゃん列車の謎に迫る。

「1番の整理券をお持ちの方」

週末の道後温泉駅は、特に午前中を中心に坊っちゃん列車に乗ろうとする人でごったがえす。従って、道後温泉駅から坊っちゃん列車に乗車するためには、案内所で「整理券」を手にする必要がある。坊っちゃん列車の発車前に乗務員が整理券番号順に乗客を乗せようとする光景は道後の名物になってしまったかのようだ。

「はい、次2番の方」・・・(かずまるを指差す私)
「えーと、2番の方はいませんか」・・・(再びかずまるを指差す私)・・・「こいつです」
かずまるは、「2番」と書かれた整理券を乗務員に見せようとしている。

「あ、どーも」

彼には身長100センチのかずまるは視界になかったようだ。うーむ、大型トラックの間に挟まれた普通乗用車の悲劇の見本だな。などと思いながら客車に乗って席を陣取る。外では整理券の番号を読みつづける乗務員が・・・「次、30番の方」・・・

まだ乗るんかい!

結局、ハ31の客車は立客12人、合計34名乗車で道後温泉駅を出発する。道後温泉9時55分発の便はJR松山駅経由古町駅行きである。もしかすると、道後温泉に一泊した観光客がJRへ向かうのかもしれない。そういえば、この便は結構「満席」の表記がされている。

が、前言撤回!!

彼らは全員大街道で下車してしまった。なんで?あとにはガランとした空間に取り残された、私とかずまると、そして高知からやってこられたShi−Mamutaさんの3人だけ・・・

道後温泉にやってきた観光客は、道後温泉につかって、ホテルで休んで、朝坊っちゃん列車に乗って、そして松山城へ行くのが多いのは大体解っていたが、ここまで極端とは・・・9時55分発という時刻が今の季節、観光客が最も利用しやすい時間帯なのか?そう言えば、この列車の折り返しの古町発は10時41分。道後温泉を10時に出ることになる。

道後温泉発午前10時の風景・・・

晩秋から初冬にかけて、道後温泉に観光客が動き始める時間帯なのかもしれない。(2002.12.09)

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第4話 「坊っちゃん列車」大盛況!

今年8月のダイヤ改正で坊っちゃん列車に転機が訪れた。特に値下げ効果は絶大であった。特に休日の道後温泉発の列車は午前中、軒並み満員である。松山市駅発は午後から急激に乗客が増える。1日3往復しかない古町便のみが、JRの接続関係で若干空いているように思える。というわけで、最近思うこと。

興味あるものが安ければ絶対ウケる

そりゃそうであろう。そこらの遊園地の汽車を完全に凌駕してしまった。私なぞ、もはや本物の坊っちゃん列車が本物の街中をゴロゴロと走り始め、値下げがされた今、これはもう、毎週遊園地の遊具のごとく乗りに行きたくてしょうがない。

さて、最近坊っちゃん列車の乗客に面白い現象が起こるようになった。古町駅や松山市駅に小型バスや大型タクシーがのりつけて、小団体が坊っちゃん列車に乗り込むのである。

道後温泉から乗れないから空いている駅から乗ろ


という状態が見られるようになった。確かに午前中の松山市駅は確かに空いている。古町駅も始発段階から満席ということはまずない。だから、彼らが乗車してくるのである。

これはもう、坊っちゃん列車が観光資源として、どっかと腰をおろしたと言うべきであろう。未来永劫に坊っちゃん列車が走りつづけることを期待して、そして、JR松山駅が高架になって、JR松山駅電停が駅舎の下に移転したときには、もう1線設けて、道後温泉のように展示を兼ねて駐留してほしいと思うものである。(2002.11.29)

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第3話 「坊っちゃん列車」復元過程でのウソ。

などというと、聞こえが悪いが、要するに現在の法規制等の事情を克服しながら、忠実に復元しようとするために起こる矛盾点のことである。

まずは根本的なことから。言うまでもなく復元坊っちゃん列車は「蒸気機関車」ではなく「ディーゼル機関車」である。煙は舞台用の「スモークマシン」だし、「擬音」スイッチを押すと、スピーカーから蒸気機関車の音が聞こえる。そして、

客車には電車の象徴、ビューゲルが載っている。

現在すべて電車化されている伊予鉄道とすれば、電源供給はもとより、列車感知やポイント操作まで、パンタグラフで処理されているのである。つまり、気動車とはいえ、ポイント切替や道路信号との連動のため、パンタ(ビューゲル)をあげる必要があるのである。しかし、ビューゲルをあげた坊っちゃん列車は、

蒸気機関車の姿をしたディーゼル機関車がビューゲルをあげている。

訳であって、見ていると、ギリシャ神話に出てくる合成怪獣「キメラ」を想像させないこともない。機関車をディーゼルにしたことや、ビューゲルを搭載したこと、あげくは機関車を浮かせながら転換する(あれは法的には「脱線」というらしい:当HPリンク先「しおかぜさん」のページから抜粋)こと、運転手のほかに助手を必要とすること、照明の明るさ不足から夜間営業運転ができないこと、連結器や客車の下回りが元の列車より複雑なこと、それら全てが、現在の法規制との戦いの中でひとつひとつ解決された結果なのである。

要するに坊っちゃん列車が走っていることに感謝せよ。

さて、その客車であるが、1両の場合と2両の場合はどちらが乗り心地が良いか。

結果としてはハ31客車1両の方が乗り心地は良い。

理由としては、連結器の形状による。坊っちゃん列車の連結器はシングルバッファ方式である。ちなみに伊予鉄道郊外電車やJR特急や電車は「電気密着式連結器」を採用している。坊っちゃん列車の場合は基本的に鉄板を併せてジャッキで締め上げているだけである。前後への緩衝装置も手伝って、前後方向にかなりしゃくられる。従って、連結器が2つあるよりは1つしかない客車1両の方が衝撃が少ないと言うわけである。

情緒の客車2両、乗り心地の客車1両

ただし、そんなことを考えて乗ったりする人は多分誰もいないであろう。(2002.11.26)

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第2話 「坊っちゃん列車」で2両のときと1両のときと、どっちが多く乗れるの?

今年8月のダイヤ改正と乗車賃値下げ以来、坊っちゃん列車の乗車率が上昇している。休日午前中の道後温泉では軒並み「満席」という表示がある。
で、その際によく聞かれる言葉が、14号機の客車(ハ31)を見たときである。

「なんでこんなに乗客が多いのに1両なの?」
「前の便は2両だったのに」
(それはあんた1号機だったからだよ)
「乗客が多いとき、前はもう1両増結してくれた」
(そんなバカな?)

などと言う声が聞かれる。

さて、ここで各客車の定員をおさらいしてみよう。
2両(ハ1+ハ2)の場合、これは各車両とも定員18名(内立席6名)、1両(ハ31)は定員36名(内立席14名)である。ということは、

結局のところ、1両だろーが2両だろーが定員は変わらない!

ただし、当然のことながら2両の方が2名だけ着席定員が多いことは事実である。この車両の長さというのは実際には全長12・3メートルは、松山市駅での機回し線の都合でぎりぎりなのである。ちなみに、最新式LRT2100系で12メートルジャスト。全国で走り始めたリトルダンサー姉妹の中で、唯一連接車でない理由はこの有効長によるものであるといって過言ではない。

さて、堅苦しい話は、ここではしないことにして、そのハ1車両に乗ってみよう。これぞ夏目漱石が小説「坊っちゃん」の中で「マッチ箱のような客車」と称した車両である。これに18名乗車しようとすると、横座りに6人ずつ、ん?6人も座れるのか?結論を申し上げよう。

屈強な成人男性6名は決して座れない!

だが、現実はどうか。男6名もが座っていることはめったにない。そりゃそうだ。なにが悲しくて男が6人も座らなけりゃならんのだ。たいていは家族連れやカップルだったりする。つまり、かずまるのようなちっちゃいのが乗っていれば、そりゃ6人座りは可能である。まあ、実際に男6人いるときは団体客である。

多少狭くても我慢せよ !

このように毎週末満員御礼の坊っちゃん列車だが、それでもたまにガラガラの時がある。夕方の道後温泉発の最終便がそれである。道後温泉到着便が満席であふれかえっているのに出発便は乗客が少ない。ま、当然かもしれない。そのときのにかずまるは、横になって古町までの約25分間横になっていたこともあった。

坊っちゃん列車の中で寝るんかい!

(2002.11.22)

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第1話 小説に見る「坊っちゃん列車」

「坊っちゃん列車」とは、「夏目漱石」の小説「坊っちゃん」から由来していることは、言わずと知れた事実である。小説の中で、主人公「坊っちゃん」が東京から松山へ赴任してきたときの情景に

停車場はすぐ知れた。切符もわけなく買った。乗り込んでみると、マッチ箱のような汽車だ。ごろごろと五分ばかり動いたかと思ったら、もうおりなければならない。どうりで切符が安いと思った。たった三銭である。

と書かれている。

この部分は、現在の坊っちゃん列車が復活運転を開始した時、まだ1乗車区間が1000円だった頃に、車掌さんがこのような説明をしてくれていたものである。
さて、この文章をよく見ていると、ある疑問が生じてくる。
「ごろごろと五分ばかり動いたかと思ったら、もうおりなければならない。」

ん、5分?

5分と言えば、現在の松山市駅から伊予鉄道高浜線古町駅北側の高架橋でタイムオーバー。衣山駅まで行けない。なんで5分なの?とよく思っていたものである。
小説「坊っちゃん」をもう一度読んでみる。すると、主人公が三津に着いた直後、地元の人に目的地の学校はどこか?と尋ねて、「2里(約8キロ)ほど離れている」と書かれているではないか。ということは、

8キロを5分で走破!?

平均速度時速96キロ、「アンパンマン列車」も真っ青である。
これらの答えは子規堂に保存されている坊っちゃん列車の客車ハ1の中に書かれていた。
「これは小説としての面白さをねらったもので、実際には28分で走っており、運賃も3銭5厘でした。」
まあ、「夏目漱石」の小説は、ページが変われば表記が変わる、といわれているほどであるから、これは、小説としての面白さ、つまり「28分」というよりも「5分ばかり」、「3銭5厘」というよりも「たった3銭」というほうが「ゴロ」が良かったのであろう。
ここで「5分ばかり」ということは、東京からの長旅の中では「そんなに時間がかからなかった」という意味なのかもしれない。

「ごろごろ(語呂語呂)と・・・」

謎が解けた。答えは小説自身の中にあったようだ。

次に「たった3銭」とはどの程度であるのか。
当時の物価で、米1升が4銭5厘とある。つまり、1升を2・5キロ、現在5キロ2000円程度であると換算すると、当時の3銭は666円となる。
坊っちゃん列車が復活運転した当時「1000円は非常に高い」と言われていたが、坊っちゃんに言わせると

「たった666円」

3銭5厘で乗車した夏目漱石は「たった776円」

である。

ちなみに、当時の市長の給料が月額40円、若干28歳の新米教師とはいえ、現在の文部科学省から派遣された夏目漱石は85円だったと言われているから、やはり坊っちゃん列車は庶民にとって「1000円」以上の存在であったに違いない。(200211.21、2003.03.04加筆)

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